11/27, LSBM Monday Seminar Series #23, Makoto Saito, CRISPR-Casとトランスポゾンの進化的接点を探る:CASTとFanzor

Presenter: 齋藤諒(Makoto Saito)

Affiliation: Postdoctoral fellow, Feng Zhang Lab, Broad Institute of MIT and Harvard

Title: CRISPR-Casとトランスポゾンの進化的接点を探る:CASTとFanzor

 

 

 

 

ゲノム編集を急発展させるきっかけになったCRISPR-Cas9のヒト細胞への適応から早10年になる。応用範囲を拡大するため、そしてより効率良く、正確にゲノム編集を行うためCRISPR-Casシステムの多様性の解析が進み、様々なCasエフェクタータンパク質が同定されてきた。こうした試みの中で、我々はCRISPR-Casが、可動遺伝因子に対する防御機構という発見当初の役割を超えて、トランスポゾンと深く関連し合いながら進化してきたことを明らかにした。たとえばCRISPR-CasのRNA誘導性を転用して移動先を決めているトランスポゾンを発見し、CAST(CRISPR-associated transposon)と名付けた。CASTはRNA誘導性にDNA二本鎖切断を介さずに任意のDNA断片を挿入することができる点で、相同組み替えをうまく利用できない非分裂細胞における有望な遺伝子挿入ツールになる可能性がある。併せて、Cas9やCas12の進化的起源が原核生物のトランスポゾン様因子であるIS200/IS605にコードされるタンパク質であることを明らかにし、それらRNA誘導性DNA切断酵素をOMEGAと名付けた。よりコンパクトなOMEGAタンパク質は臨床応用に際して生体内にデリバリーしやすいという利点がある。さらに我々は、Cas12の祖先であるOMEGAタンパク質のひとつTnpBが、真核生物へと転移してFanzorへと進化したことを示し、真核生物にさえもゲノム編集に使えるプログラム可能なRNA誘導性DNA切断酵素が備わっていることを明らかにした。本講演では、上記二つのシステム「CASTとFanzor」について、その機能解析を中心に紹介したい。