拡張型心筋症における新規原因遺伝子MYLK3の同定

拡張型心筋症は心筋の機能障害により心臓の収縮力低下、心拡大をきたす心臓疾患ですが、未だ治療法が確立していない難治性疾患です。この疾患は心不全、致死的不整脈、心臓死の原因になり、遺伝子変異が原因で発症するとされていますが、半数以上の患者では原因遺伝子が同定できておらず、新しい原因遺伝子変異の存在が示唆されていました。

今回、大学院生の飛田尚重(東京女子医科大学 循環器内科)、協力研究員の野村征太郎(東京大学 循環器内科)は次世代シーケンサーを用いた全エクソーム解析により、拡張型心筋症における新規原因遺伝子MYLK3を同定しました(図)。MYLK3はミオシン軽鎖のリン酸化を介して心臓機能を制御しており、この遺伝子をノックアウトしたマウスは心不全を発症します。本研究は、この遺伝子の変異がヒトにおいて心筋症・心不全の発症に直結することを示した初めての報告であり、心筋症の遺伝子診断・治療法開発に向けて大きな進展となると考えられます。

本研究は本学付属病院循環器内科の小室一成教授、東京女子医科大学病院循環器内科の萩原誠久教授らとの共同研究により行われたもので、科学雑誌Scientific Reports」のオンライン版で公開されました。

 

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雑誌名: Scientific Reports

論文タイトル: Identification of MYLK3 mutations in familial dilated cardiomyopathy

著者: Takashige Tobita, Seitaro Nomura, Hiroyuki Morita, Toshiyuki Ko, Takanori Fujita, Haruhiro Toko, Kenta Uto, Nobuhisa Hagiwara, Hiroyuki Aburatani, Issei Komuro