Mariko Iijima, Motonobu Anai, Tatsuhiko Kodama, Yoshikazu Shibasaki
Epiregulin-blocking antibody inhibits epiregulin-dependent EGFR signaling.
Biochem Biophys Res Commun. (2017), doi: 10.1016/j.bbrc.2017.03.006.
上皮成長因子受容体 (EGFR) は、細胞増殖や遊走など、多くの細胞機能に関与する受容体である。EGFやepiregulin (EREG) などのEGFファミリーリガンドがEGFRに結合、活性化し、シグナル伝達が行われている。 EREGは、正常細胞では発現が低いが、ヒト大腸がんや乳がんにおいて特に発現が高く、この因子が腫瘍形成に重要な役割を果たしていることが示唆されている。しかし、それぞれのEGFファミリーリガンドにおいて、異なるシグナル伝達経路を有している可能性については明らかとなっていない。
そこで、ヒトEREGを特異的に認識する抗EREG抗体を作成した。この抗体はEREGの立体構造を認識し、EREGとEGERとの結合に拮抗する可能性があることから、EGFRの下流のシグナル伝達における影響を検討した。その結果、この抗体が、EGF刺激によるEGFRシグナルにほとんど影響がないが、EREG刺激によるEGFRのシグナルを抑制し、EREG刺激特異的ブロッキング抗体として作用することが示された。この抗EREG抗体 は、EREG独自のシグナル伝達経路を解明するために重要であり、また、癌の治療薬となる可能性が示唆された。