酸性環境における腫瘍の悪性化にコレステロール代謝制御タンパク質SREBP2が寄与することを発見

固形がんにおいては不完全な血管構築による血流不全から、がんの中心部が低酸素状態に陥りやすく、その結果として酸性状態(アシドーシス)になることが知られています。しかし、酸性状態におけるがん細胞の応答メカニズムや酸性環境によるがん悪性化への影響は、これまで明らかにされていませんでした。大澤毅特任助教(システム生物医学分野)および近藤彩乃博士(先端学際工学専攻)らは、酸性状態のがん組織において、コレステロール代謝のマスターレギュレーターである転写因子SREBP2が活性化され、コレステロール合成経路や酢酸代謝経路における一連の酵素群の発現を促進し、腫瘍増殖および患者予後に関与するなどがんの悪性化に寄与することを明らかにしました。

プレスリリース(PDFファイル)

本研究成果は、2017年2月28日12時(米国東部標準時間)に電子ジャーナル「Cell Reports」に掲載されました。
Extracellular Acidic pH Activates the Sterol Regulatory Element-Binding Protein 2 to Promote Tumor Progression
http://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(17)30171-7

なお、本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「後天的ゲノム修飾のメカニズムを活用した創薬基盤技術開発」の研究成果をシーズとし、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)」や科学研究費補助金の支援を得て行われました。