

| 専門分野: | 核内受容体システム、代謝・内分泌学 |
| 研究内容: | 核内受容体の標的遺伝子の同定、 |
| 転写複合体解析、核内受容体創薬 |
核内受容体は,発生・分化といった生理的因子あるいは環境因子等の種々の刺激に応答してリガンド依存的に 遺伝子発現を調節する転写制御因子である.ヒトでは核内受容体は48遺伝子,90種類以上のタンパク質が同定されているが, その多くは内因性のリガンドや生理学的機能が未知のオーファン受容体として分類されている。 これら核内受容体は,脂溶性低分子化合物をリガンドとすることに加え,糖尿病や動脈硬化症といった代謝異常症, 薬物相互作用あるいは癌細胞の増殖に関与するものも含まれており,薬物開発のターゲットとして注目されている。 核内受容体の転写活性は,1)リガンド結合,2)翻訳後修飾,3)他の転写因子や共役因子(コアクチベーター,コリプレッサー)との タンパク−タンパク相互作用,の少なくとも3つの機構で調節されており,これらの機構は独立あるいは協調的に働いて シグナルを調節している。 しかしながら,生理的条件下においてどのような転写複合体が形成されているかについてはほとんど明らかにされていない。 我々は核内受容体の多面的な機能,組織あるいは細胞特異的な発現,リガンド特異的に形成される転写複合体を 明らかにするため,モノクローナル抗体を作成して局在解析,ChIP-on-chipアッセイ,targetedプロテオミクスを 推進している。
タンパク質の組織や細胞局在に関するデータはそれらの生理的機能を類推する上で有用な情報源である。 我々は免疫組織学的検討によって核内受容体の組織および細胞局在について検討を行っている。 これまでにLXRαがヒト動脈硬化病変に発現していること,P1およびP2プロモーター由来HNF4αが 胃癌や大腸癌において発現変動することを明らかにしている(図1)。 現在,これまでに取得した免疫染色画像をウェブサイト上にデータベースとして開示する準備を進めている。
核内受容体のコンセンサス結合配列を用いた結合部位予測では,陽性予測値が低く擬陽性を検出することが多い。 また,遺伝学的なアプローチによって機能を明らかにすることは可能であるが, それらが直接的か二次的かを区別することは困難である。 ChIP-on-chipアッセイはゲノムDNAと標的タンパク質との相互作用を免疫沈降法と ゲノムDNAマイクロアレイとの組み合わせで特異的に検出する方法であり,我々はこの手法を用いて ゲノム上の核内受容体結合部位の同定を行っている。
タンパク−タンパク相互作用は核内受容体の転写活性およびその標的遺伝子の発現を規定している。 それ故,生理的条件下において形成される核内受容体複合体を同定することは機能を理解する上で重要である。 我々は,核内受容体タンパク複合体を免疫沈降にて回収した後にトリプシン消化し, ショットガンプロテオミクス法にて核内受容体複合体に含まれるタンパク質を同定している(図2)。

図1 P1およびP2プロモーター由来HNF4αの発現変動

図2 ショットガンプロテオミクス法を用いた核内受容体のtargetedプロテオミクス