

| 専門分野: | 分子細胞生物学 |
| 研究内容: | 細胞内小胞輸送。 細胞の小胞輸送など膜ダイナミクスに重要な分子の動きを時間的、 空間的調節に注目しその機構を解析する。 |
細胞内は膜に囲われた区画に分かれており、生体膜はそれらの間の輸送に際してダイナミックな変化を示す。 細胞膜受容体はエンドサイトーシス経路に入り、あるものはリサイクル、あるものは分解される。 一方、細胞内で合成される蛋白はゴルジ、分泌小胞を経て細胞外にいたるエクソサイトーシス経路をたどる。 "membrane traffic" と呼ばれるこの過程を解析することは生命を理解するために必須であると同時に "membrane traffic"の異常による病態の解明につながる。
膜のダイナミックは変化に、膜分子と細胞質分子の相互作用が重要であるため、 私たちの研究室は膜脂質とそれと相互作用する蛋白に注目している。 この調節は細胞内で時間的に調節されているとともに特定部位でおこるためのシグナルが必要である。 我々はこのシグナルが膜脂質イノシトールであることをつきとめ、そこから膜が変形して管状構造を とることを示した(図参照)。 さらにイノシトールは膜の活性化された部位のアクチンなど細胞骨格調節も制御しているので これらを含め解析している。
細胞内の位置、運動変化をとらえる重要な手法として画像解析を行っている。 具体的には低分子量G蛋白質、イノシトールリン酸化酵素(PIP5K)、コート関連蛋白などを対象に、 その遺伝子操作、細胞への発現、細胞分画などを駆使し、生細胞で分子動態を解析していく。

図1.細胞内膜管状化の経過
細胞—細胞接着にアクチン重合が関与することが示唆されていたが、それを引き起こす機構は不明であった。 イノシトールとそのリン酸化酵素が、細胞—細胞接着面に実際局在し、接着を破壊すると局在も消失することを示し、 アクチン重合が関与することを支持する論文。
原著論文
Akiyama, C., Shinozaki-Narikawa, N., Kitazawa, T., Hamakubo, T., Kodama, T., Shibasaki, Y.
Phosphatidylinositol-4-phosphate 5-kinase gamma is associated with cell-cell junction in A431 epithelial cells.
Cell Biology International, 29, 514-520 (2005)
ストレスファイバー、ラフリングなどアクチンが形成する特徴的な構造につき、 リン酸化イノシトール(PIP2)がどのように作用するかを解析した論文。
原著論文
Yamamoto M., Hilgemann D.H., Feng S., Bito H., Ishihara H., Shibasaki Y., and Yin H.L.
Phosphatidylinositol 4,5-Bisphosphate Induces Actin Stress-fiber Formation and Inhibits Membrane Ruffling in CV1 Cells
J. Cell Biol. 152: 867-876, (2001)
細胞内アクチン重合は多くの因子により調節されているが、この論文では低分子量G蛋白Racによる調節を解析した。 血小板活性化時に急激なアクチン重合が起こるが、イノシトールリン酸化酵素がその中間で働き、 産物のPIP2がアクチン重合端に結合しているキャッピング蛋白を外すことが一つの機構であることを示した。
原著論文
Tolias KF, Hartwig JH, Ishihara H, Shibasaki Y, Cantley LC, Carpenter CL
Type Iα phosphatidylinositol-4-phosphate 5-kinase mediates Rac-dependent actin assembly.
Current Biology 10:153-6, (2000)
イノシトールは細胞膜に存在し、3つのリン酸化部位を持ち、これを単独または組み合わせにより 7つのリン酸化イノシトールを生成する。 それぞれの分子は特異的分子を結合してそれぞれ特異的なシグナルを下流に伝える。 5位のリン酸化を行う酵素phosphatidylinositol 5-kinaseのいくつかのアイソフォームのクローニングと その解析の論文。
原著論文
Ishihara H, Shibasaki Y, Kizuki H, Wada T, Yazaki Y, Asano T, Oka Y
Type I phosphatidylinositol-4-phosphate 5-kinases. Cloning of the third isoform and deletion/substitution analysis of members of this novel lipid kinase family.
J. Biol. Chem. 273(15): 8741-8, (1998)
細胞運動、小胞輸送など細胞のダイナミックな運動を支配するアクチンについては種々の調節因子が知られてきた。 この論文では、これまでシグナリングの前駆体と思われていたイノシトールが、 そのリン酸化酵素phosphatidylinositol 5-kinaseによりリン酸化イノシトール(PIP2)となり、 in vivoで細胞内アクチン重合を促進し、新しいアクチン調節因子として多くの細胞機能に働いていることを示した。
原著論文
Shibasaki Y., Ishihara H., Kizuki N., Asano T., Oka Y., Yazaki Y. Massive actin polymerization induced by phosphatidylinositol-4-phosphate 5-kinase in vivo. J. Biol. Chem. 272 7578-7581 (1997)