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システム生物医学/蛋白複合体

准教授
望月 康弘
Associate Professor Yasuhiro MOCHIZUKI
専門分野: 分子生物学
研究内容: バキュロウイルス発現系を用いた、高機能性抗体の作成。
イノシトールリン脂質による多様な細胞機能制御の解明。

蛋白質発現バキュロウイルスを抗原とした高機能性抗体の作成

抗体医薬を目指した高機能性抗体の作製

抗体医薬は特異性が高く、副作用が少ない等の利点があり、より多くの有用な医薬品の開発が期待されている。 しかし、抗体医薬の主なターゲットとなるG蛋白質共益型受容体を含む膜蛋白質は、疎水性の膜貫通領域を持つため、 抗原の調製が容易ではない。 また、膜に存在する蛋白質を細胞表面で認識できる抗体の作成は、抗原を十分得られたとしても非常に難しい。 これらの難点を解決するべく、当研究室の浜窪教授らによってバキュロウイルスを用いた抗原調製法が開発された(図1)。 抗原とする膜蛋白質をバキュロウイルスの膜上に発現させると、蛋白質を凝集させることなく大量に調製できる。 また、それをウイルスごと免疫することで、立体構造が保たれた状態で免疫することが可能となる。 我々はこの方法を用いて、膜蛋白質に対するモノクローナル抗体を作成している。 また、膜蛋白質を含む抗体の作成が困難な蛋白質について、バキュロウイルスの膜蛋白質であるgp64と 融合蛋白質としてウイルス上に発現させ、免疫を行っている(図1)。 これまでにこれらの方法により非常に有用な抗体を得ており、基礎研究のみならず、 臨床に使用できる抗体医薬の創製を目指して研究を行っている。

高機能性抗体を使ったイノシトールリン脂質代謝系の解析

免疫染色によって蛋白質の局在を明らかにしたり、免疫沈降によって蛋白質複合体を解析することは、 蛋白質の機能を研究する上で大変多くの情報を与えてくれる。 抗体の作成において、gp64融合蛋白質による免疫法は膜蛋白質のみならず、 通常の免疫法では作成が困難な蛋白質に対しても有効である。この方法によって得た高機能性抗体を使って、 イノシトールリン脂質代謝系の解析を行っている。

イノシトールリン脂質は細胞内に存在し、イノシトール環のリン酸化の状態によって 様々な生理活性をもつ重要なシグナル分子である。 細胞内にはこのリン酸化の状態を調節する、いくつものキナーゼやフォスファターゼが存在する(図2)。 そして、これらの酵素のいくつかの異常は、癌や神経性疾患の原因となることが知られている。

Myotubular myopathy1(MTM1)は、筋萎縮症の原因遺伝子として発見された イノシトールリン脂質フォスファターゼである。 MTM1には13個のファミリー蛋白質(MTMR)がある。 その一つのMTMR9には酵素活性が無く、これまで機能が明らかでは無かった。 MTMR9は、MTMR7という酵素活性を持った分子と複合体を形成し、小胞輸送を調節している可能性が高い(図3)。 MTMRに対する高機能性抗体を作成し、その細胞内における機能を解明しようとしている。


図1 Baculovirus display systemの模式図


図2 イノシトールリン脂質代謝(酵素と反応経路)


図3 MTMR6,7,9のドメイン構造