顕微鏡技術、イメージング、電子光学
顕微鏡技術を駆使して、 微小な生体細胞構造の観察と解析
あらゆる科学・技術の分野では観ることが重要な研究手段になっている。なかでも顕微鏡技術は目では直接見ることができない微細な構造を可視化することができるので、様々な方式が実用化されている。 顕微鏡技術はこれまで比較的高価で専門的な技術でした。東京大学先端科学技術研究センターではTBIプロジェクト「親指サイズ電子顕微鏡の研究・開発」により、コンパクトで持ち運び可能なポータブル走査電子顕微鏡を開発して、観たいところで自由に観察できる「その場観察機能」を実現した。従来と大きく異なる電子光学設計と製造技術によるアプローチで超小型・高精度電子光学鏡筒を開発し、高性能で、かつ超小型な走査電子顕微鏡を実現した。この結果、生体試料観察をはじめとする多くの分野で走査電子顕微鏡の利用が拡大されることが期待できる。
ソフトX線による生体細胞の三次元断層観察技術
ナノスケール分解能で細胞、蛋白質等の内部を三次元断層観察できる観察技術を開発している。生体細胞、蛋白質の内部構造をナノオーダーで観察することはバイオ・テクノロジー分野の発展に寄与することが期待できる。X線はその物質透過性により内部構造の観察に広く用いられてきた。 細胞のようなソフト・マテリアル内部の観察にはエネルギーが2keV以下の低いエネルギーのソフトX線による観察が必要になる。これらの技術は放射光施設等ではすでに先導研究としてナノスケール断層観察の成果が出始めている。しかし、これらの観察技術がバイオ・テクノロジーの分野で広く活用されるためには、一般のラボレベルで実用的に使える観察装置を提供することが必要である。しかし、ラボレベルで使えるような簡便なソフトX線顕微鏡はまだ開発されていない。 特に、水を含有したままの生体細胞の内部構造を断層観察するためには、「水の窓」(Water-window)とよばれるエネルギー領域200eV-500eVの超低エネルギーのソフトX線が必要である。このエネルギー領域のX線では水は透過するが、蛋白質(カーボン)では吸収されるため、水の影響を受けずにカーボンなどの細胞を構成する元素の吸収X線像を得ることができる。 さらに、画像処理技術と組み合わせた三次元断層観察技術により任意の深さのX線断層画像が得られる。 X線照射により発生する蛍光X線を各断層画像ごとに元素分析することで、例えば、生命現象に深い関わりがあるカルシウムなどの元素の細胞内での三次元分布を観察することができる。
複合機能による高機能な生体観察技術
ナノスケールの顕微鏡技術は、X線顕微鏡を始めとして電子顕微鏡、プローブ顕微鏡などの多くの顕微鏡技術があり、それぞれ一長一短のある特徴をもって使われています。これらの顕微鏡技術を融合させて、さらに高機能な生体観察技術を実現していく計画である。
広い応用分野への展開
生体観察をターゲットとして開発されるこれらの技術は生体試料に限定されずにナノテクノロジーや複合材料の開発などの広い応用分野に展開されることが期待される。 これまでに無かったラボレベルで簡便に使えるソフトX線断層観察装置は、ソフト・マテリアルで構成されたナノテクノロジー材料の断層観察や医薬品の品質管理等に応用されることが期待できる。