白血球が血管壁にもぐりこむ機序を解明し治療薬を作る
血管の内側は1層の内皮細胞のパイプからできている。白血球が内皮細胞のパイプをくぐりぬけて外の組織にでる(図1)ことが、動脈硬化や炎症の病因として鍵となることがわかってきた。 内皮細胞は、接着因子を発現して白血球が潜り込む場所をきめている。炎症接着因子サイトカインTNFαはNFkBを介してさまざまな接着因子を誘導する。 VCAM1の誘導は、炎症や動脈硬化を慢性的に進める鍵と思われ治療薬の標的として重要と考えられる。最初に発見した阻害剤K7174はGATA因子を介してVCAM1発現を抑制すると考えられた。内皮細胞でGATAと相互作用するタンパクとしてHexと新規の細胞周期制御タンパクが発見されている。 不思議なことにこの阻害剤は接着因子ICAM1やEセレクチンはむしろ過剰に誘導する。さらにさまざまな阻害剤を検討するとヒストンの脱アセチル化酵素の阻害でもVCAM1誘導が抑制されるがICAM1は過剰に誘導されることがわかってきた。一般的には脱アセチル化阻害は転写を活性化するはずなので、TNFはまずなんらかの遺伝子の活性化を抑制し、それをうけてVCAM1遺伝子が活性化する可能性もある。 井原研と共同で、TNF刺激後の全遺伝子の変動を15分ごとに検討したところ図2に示す新規遺伝子のように多くの遺伝子座がIkBα発現による抑制を反映して振動しながら発現していることがわかってきた。振動する際に遺伝子の5‘端から1回目は5kb/分で振動が進むが、2回目からはほとんど同時に振動がおこる。この違いは1回目はクロマチンをときほぐしながら転写が進んでいるが、2回目からはすでにクロマチン構造が開いている可能性を示唆する。 時間的にみるとVCAM1の誘導はこの2回目の振動以降で誘導されている。そこでVCAM1遺伝子座に結合しているタンパク複合体をchip no chip技術で系統的に解析を進めている。 これらの結果から動脈硬化と炎症の新しい治療方法を生み出したい。