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ゲノムサイエンス

准教授
金田 篤志
Associate Professor Atsushi KANEDA
専門分野: エピジェネティクス
研究内容: 癌におけるエピジェネティクス異常の研究

癌におけるエピジェネティクス異常

ゲノムDNA塩基配列そのものではなくその修飾要素として細胞分裂の際に娘細胞に 維持・伝達される情報をエピジェネティクスと呼び、DNAメチル化、ヒストン修飾、 ゲノムインプリンティングなどが含まれる。 発生・分化において遺伝子発現を制御する重要な役割を果たし、その異常は癌を初めとするさまざまな疾患に関わる。

遺伝子サイレンシング

遺伝子プロモーター領域DNAが異常メチル化すると、 ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)やヒストンメチル基転移酵素(HMT)を介してメチル化CpG 結合蛋白(MBD)が結合する。 ヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)はHMTによりメチル化され、またHDACによるヒストン脱アセチル化は クロマチン凝集を引き起こし、遺伝子発現を不活化する。 このような遺伝子サイレンシングは癌抑制遺伝子不活化の主要なメカニズムの一つとなっており、 こうした癌におけるエピジェネティクス異常をマーカーに用いたゲノム解析により、 癌で不活化される遺伝子を同定することができる。 例えばDNAメチル化をマーカーに新たなサイレンシング遺伝子、臨床病理学的因子との相関、 新規癌抑制遺伝子の同定などが可能である。

ゲノムインプリンティング消失(loss of imprinting, LOI)

例えばIGF2遺伝子は父方アリルのみ発現し母方アリルはサイレンシングされているインプリンティング遺伝子であり、 その調節にアリル間でメチル化状態の異なる領域DMRのメチル化やインスレーター結合蛋白CTCFの結合などが関わっている。 さまざまな腫瘍でLOI、すなわち両アリルとも発現する異常が認められるが、 成人の5-10%では正常組織においてもLOIが起きており、 発現量がたかだか2倍に上昇する異常にすぎないIgf2遺伝子LOIが腸管腫瘍発生のリスク因子であることがわかっている。 正常細胞に蓄積するエピジェネティクス異常は、新たな癌リスクマネジメントのターゲットになると思われる。

タイリングアレイを用いたエピゲノム解析

ゲノム上のエピジェネティックな情報を、免疫沈降とタイリングアレイを用いて詳細にマッピングする。 例えばDNAメチル化の検出のため、断片化したゲノムDNAを抗メチル化シトシン抗体により免疫沈降しメチル化部位を濃縮、 これを精製・増幅・標識後タイリングアレイにハイブリダイゼーションする(図1)。 この手法で大腸癌細胞株HCT116から抽出したDNAを解析すると例えばHOXA領域において、シグナル強度が Input DNA(コントロール)に比べて有意(P<10-2)に高い メチル化候補部位CMSを詳細に検出でき、そのメチル化状態はbisulfite suquencingにて確認できる(図2)。 ヒストン修飾、遺伝子発現、コピー数などの情報と合わせ統合的なエピゲノム解析を目指す。


図1 Methylated DNA immunoprecipitation (MeDIP) - Chip


図2 HOXA領域におけるDNAメチル化マッピング