疾患関連遺伝子の同定、新規医薬品標的候補分子の評価
治療薬・診断薬のための新たなターゲットの発見・検証
我々はゲノム抗体創薬という名前が示すとおり、様々なゲノム情報に基づいて革新的な新規医薬品・診断薬のシーズ探索を目指しています。ゲノム情報を取り扱うバイオインフォマティクスは疾患関連遺伝子の探索や機能解析に有力なツールとして世界中で重要視されています。一方で大切なことは、どのようなインフォマティクスを構築しようとも、実際の実験的な実証を積み上げなければ真の創薬ターゲットを発見することはできません。宝を発見したり、育てるためには、実際に実験を行って、隠れている創薬のタネを探すというサイエンス本来のやり方を徹底することが必要であると考えています。
ポストゲノム研究としての抗体医薬品開発
抗体医薬品の実用化、臨床開発が急速に進んでいる。この背景には、抗体工学技術の進展によりヒト化抗体やヒト抗体の作製が容易になり、抗原性の問題が回避され臨床評価が可能になったこと、発売された抗体医薬品が急激な売上げの増加をみせていることなど、抗体が魅力的な創薬研究の対象となったことがある。1990年代の半ばから、ゲノム関連のベンチャー企業や欧米の大手製薬企業が巨額な資金力を背景にすさまじい勢いで疾患関連分子の探索を展開し、実際に多くの疾患関連遺伝子を見出した。しかし、医薬品開発の視点からは、疾患関連遺伝子は必ずしも成功確率の高い創薬標的にはならないことも事実で、ゲノム創薬の成果を如何に創薬につなげるかが重要な課題になっている。抗体はその抗原に対する高い特異性と結合活性から標的分子の機能や生理的意義の研究に欠くことのできない研究ツールであるだけでなく、治療薬への応用も期待でき、ポストゲノム研究でも圧倒的な存在感を示している。
標的候補分子の見極め
DNAチップ技術の進歩により発現プロファイル解析やゲノム解析による莫大なデータが蓄積され疾患に関連すると思われる分子が数多くリストアップされている。ただし、それらはあくまでも推測の域にあるだけで、本当に治療や診断の標的として有益な分子かどうかを検証する作業が必要である。多くの場合、このステップがネックとなり、解析されないままリストの中に眠る事になってしまう。我々はそれらの分子の評価、解析作業をスピーディーに進め、抗体医薬の標的としての見極めを進めている。
モノクローナル抗体の作製と治療コンセプトの検証
ピックアップされた標的候補分子に関しては遺伝子解析、遺伝子クローニング、タンパク発現、タンパク精製、抗体作成、薬効試験など様々な専門性を有した研究員により解析が行われ、想定した治療コンセプトの検証作業を進めている。実際にモノクローナル抗体を作成し、免疫組織染色などでタンパク発現の特異性を確認するのみならず、期待した薬効を示しうるかin vitroやin vivoの系で証明実験を実施している。 抗体を癌の治療薬として考えた場合、抗腫瘍メカニズムとしては抗体依存性細胞障害活性(Antibody-dependent cell mediated cytotoxicity : ADCC)、補体依存性細胞障害活性(Complement-dependent cytotoxicity : CDC)、中和活性、アポトーシス誘導活性などが重要である。それ以外にも、アゴニスト活性を持った機能性抗体なども作製可能である。また、抗体の形状から見ても低分子化したり脱糖鎖化やトキシン結合など様々な修飾分子が広く創出されている。我々もそのようなアイデアを適宜盛り込んで標的分子それぞれについてフィットした医薬品開発を進め医療に貢献して行きたい。