

| 専門分野: | 生化学 |
| 研究内容: | 膜タンパク質の解析技術の開発。膜タンパク質,核タンパク質のターゲテドプロテオミクス。バキュロウイルス発現系による膜タンパク質特異抗体の作成技術開発。抗体を用いたイメージング技術,バイオチップ技術の研究 |
| ■ 先端科学技術研究センター 分子生物医学分野 |
ゲノム解析など網羅的な解析手段により多数の機能未知の膜タンパク質やその複合体が見出され, それらの機能を探ることが課題となっている。 コレステロール代謝の研究途上で膜タンパク質を発芽型バキュロウイルス(Budded Baculovirus; BV)上に ディスプレイできることを見出した。 このBV技術を用いて,Gタンパク質共役型受容体複合体やアルツハイマー症のγセクレターゼ複合体などの 機能的発現に成功した。 バキュロウイルスは200nm程度の大きさで比較的安定であることからバイオチップへの応用の 可能性について研究している。 さらにBV上に発現した膜タンパク質を直接免疫し,膜タンパク質に対する機能性抗体を取得する 技術を開発している(図1)。 これまで取得が困難であった膜タンパク質や複合体を認識する抗体の作成を目指す。 これらの抗体は,癌治療や診断および動脈硬化症や膠原病,神経変性疾患やウイルス感染症など 治療法の確立していない様々な疾患の新たな治療薬の開発を目標とする。
膜タンパク質が外界の刺激を細胞内に伝え,そのシグナルがシグナル伝達系を経て刺激に 反応する遺伝子を誘導する。 このような刺激応答のメカニズムを解析するには,関与する複数のタンパク質の相互作用を 検出することが重要であることがわかってきた。 しかし,これまでのプロテオミクスの手法では,細胞内に微量に存在するタンパク質の解析は 非常に困難である。 本研究室では高親和性抗体を作成して低ノイズの磁性ビーズに固定化し, 少量の細胞(107個)から内在性転写因子をLCMS解析にて高感度に同定する ターゲテドプロテオミクス技術を開発している(図2)。 さらにリン酸化や硫酸化など生理機能に深く関わるタンパク質修飾の解析技術を加え, 転写調節やシグナル伝達などのダイナミックなタンパク質相互作用の解析を行なうことが目標である。
癌表面抗原に対する特異性の高い抗体を放射性物質でラベルし,放射線を体外から検出することにより, 癌の浸潤や転移を調べる技術を開発する(図3)。 抗体工学を用いて抗体を改変し組織移行のよいプローブを作成する。 ポジトロン核種を抗体に付加し,担癌マウスを用いて ポジトロンCT(PET;Positron Emission Tomography)にて癌病巣部を 検出するイムノPET技術による次世代の医療技術の開発を行なう。

図1 膜タンパク質の機能的発現と特異抗体の作成の開発

図2 タンパク質複合体のターゲテドプロテオミクス

図3 体外イメージング
γセクレターゼ複合体の活性化型が神経系細胞のラフトに存在し, スタチンによってコレステロールおよびゲラニルゲラニル化依存的に可溶性画分に移行することを示した。 アルツハイマー症のアミロイド蓄積とコレステロール代謝の関係を示唆する。
原著論文
Urano Y, Hayashi I, Isoo N, Reid PC, Shibasaki Y, Noguchi N, Tomita T, Iwatsubo T, Hamakubo T, Kodama T.
Association of active gamma-secretase complex with lipid rafts.
J Lipid Res. May;46(5):904-12. 2005.
γセクレターゼ複合体がバキュロウイルス上に再構成され,活性を有していることを示した。 γセクレターゼの活性化機構の研究と同時に新薬や抗体のスクリーニングに使用できる。
原著論文
Ikuo Hayashi, Yasuomi Urano, Rie Fukuda, Noriko Isoo, Tatsuhiko Kodama, Takao Hamakubo, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo.
Selective reconstitution and recovery of functional gamma-secretase complex on budded baculovirus particles.
J Biol Chem. Sep 3;279(36):38040-6. 2004.
SREBP, SCAPなどのER膜タンパク質がバキュロウイルス画分に回収されることを示した。 膜タンパク質の解析に使用できる可能性を示唆した。
原著論文
Urano Y, Yamaguchi M, Fukuda R, Masuda K, Takahashi K, Uchiyama Y, Iwanari H, Jiang SY, Naito M, Kodama T, Hamakubo T.
A novel method for viral display of ER membrane proteins on budded baculovirus.
Biochem Biophys Res Commun. 308(1):191-6. 2003
GPCRが三量体Gタンパク質とバキュロウイルス上で再構成されることを示した。 シグナル解析やチップへの応用が可能であることを示した。
原著論文
Masuda K, Itoh H, Sakihama T, Akiyama C, Takahashi K, Fukuda R, Yokomizo T, Shimizu T, Kodama T, Hamakubo T.
A combinatorial G protein-coupled receptor reconstitution system on budded baculovirus.
Evidence for Galpha and Galphao coupling to a human leukotriene B4 receptor.
J Biol Chem. 278(27):24552-62. 2003.
血管内皮細胞においてTNFα刺激によるVCAM1の誘導において GATA因子およびその複合体が重要な役割を担っていることを示した。
原著論文
Umetani M, Mataki C, Minegishi N, Yamamoto M, Hamakubo T, Kodama T.
Function of GATA transcription factors in induction of endothelial vascular cell adhesion molecule-1 by tumor necrosis factor-alpha.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 21(6):917-22. 2001.
著書