

| 専門分野: | 分子生物学、生物情報科学 |
| 研究内容: | 人工蛋白質設計 |
ヒトやマウスのゲノム情報が解析され、その後も次世代シーケンサ技術や質量分析計などの進歩により、種々のオミクスを含め生命科学分野は大いに進展している。それに呼応するように、治療薬の分野でもゲノム情報をもとに、種々の医薬品が研究開発されるようになった。西暦2000年頃は、『ゲノム創薬』ともてはやされたが、現在はもっと地に足がついた形で医薬品の研究開発が進行している。
蛋白質医薬品である抗体医薬品に関しても、世界で最初に米国FDAが抗体医薬品を認可したのが1998年で、ヒトやマウスのゲノム情報が完全に読まれる前であった。第一世代の抗体医薬品は、マウス由来の抗原認識領域とヒト抗体のFc領域のキメラ抗体であり、人工蛋白質である。しかし、ヒト体内で免疫原性が低くなるように、マウス由来の抗原認識領域をゲノム情報に基づいてヒト型化する試みは進んでいなかった。現在は、ゲノム情報に加え、種々のオミクス情報もデータベース化され、マウス由来の抗原認識領域をヒト型化するための情報も豊富である。
現在、第三世代の抗体医薬品として、がん治療用にマウスモノクローナル抗体から得られる抗原認識領域をヒト型化設計し、一本鎖のscFv改変したものに、さらにストレプトアビジンSAを繋いだ人工蛋白質scFv-SAのヒト型化設計を行っている。ヒト型化scFv-SAは、scFvの抗原認識部位でがん細胞を認識し、放射性アイソトープを結合させたビオチンをSAに集積させることにより、腫瘍を攻撃するコンセプトの治療薬となる。

図1 ストレプトアビジンとビオチン(ピンク)の結合の様子(PDBID:1MEPより)