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LSBMについて
序章
Omics入門
7.ゲノムからみた調節の要素の全体像(第4章)
 人間の細胞でのフィードバック制御の全体像を考えてみよう。調節制御には3つの要素がある。まず、外の刺激や変化を感知するセンサーである。それを伝えるシグナル伝達系があり、そして最後に遺伝子を制御する転写因子である。
 ゲノムの全体が解読されてそれぞれにかかわる蛋白が急速に明らかになっている。
図序−9に、ヒトの細胞から遺伝子発現にかかわる7つの代表的な経路を示す。これらのそれぞれに、様々な経路がある。
 細胞表面で、光や温度、栄養分やホルモンを認識するセンサー(受容体)として最も重要なのはG蛋白共役型受容体であるである。ヒトのゲノムでもっとも大きい遺伝子ファミリーですでに888個が確認され、最終的には千個以上あると思われる。
 センサーで感知された情報を核に伝えるのがシグナル伝達系の蛋白である。蛋白をリン酸化して活性化したり、細胞内のカルシウムや脂質性メディエーター濃度を変える。最終的に遺伝子を活性化する蛋白は転写因子とよばれる。転写因子は数十の蛋白が、大きな複合体と作りRNAの合成を制御する。いろいろな情報はここで統合される。
 一つのシグナルで沢山の遺伝子が活性化されることが、人間の遺伝子制御の特徴である。1960年にフランスのジャコブとモノーは、大腸菌の遺伝子の活性化はネガティブ・フィードバックにより制御されていることを示した。糖分が不足すれば、糖の合成酵素の遺伝子が活性化される。すると糖分が増える。すると今度は遺伝子が不活性化される。こういう風に、遺伝子の作用が制御されるのをフィードバックのループが閉じているという。ところが、人間の遺伝子が活性化されるときには沢山の遺伝子が活性化され、様々な制御系が関連している。たとえば生活習慣病では高脂質血液症の人で血糖が高く、肥満があり血圧が高い人がいる。このようなメタボリックシンドロームが特徴とされ、こうした素因が重なると「代謝症候群」といわれ心筋梗塞や脳卒中がおこりやすい。
 人間の遺伝子の制御ではフィードバックの制御は閉じておらず、重なりあっている。同時に細胞のレベルで統合されてホメオスターシスを形成している。細胞の状態がかわると、この統合が崩れて悪循環が始まり、病気が発症する。



2005年6月に羊土社から刊行予定、許可なくして複製・転載を禁止します。