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LSBMについて
序章
Omics入門
5.ゲノミクス:静的な「遺伝子」からダイナミックな「ゲノム」へ(第2章)
 解読されたヒトゲノムが示すのはダイナミックなゲノム像である。図序−6に示すようにヒトのゲノムでは酵母などとは違って、タンパクの配列をコードしている領域は1.5%程度で、その他の配列は、「動く遺伝子」と呼ばれるレトロトランスポゾンなどの反復配列や、染色体の複製や転写の調節制御にかかわる配列であることがわかってきた。ヒトの遺伝子の発現は、高度に精密な制御をうけている。



 ヒトゲノムには「動く遺伝子」と表現されるようなレトロウィルスなどが関与したと思われる多数の反復した配列があり、遺伝子のつくりかえが進化のなかでスピードアップしてきている。遺伝子が重複して遺伝子ファミリーがうまれるとともに、遺伝子の活性化を制御する調節配列も重複し、移動し、複雑化している。  DNAは転写因子などに活性化されてRNAを作るが、その転写のしくみを調節する転写因子は4−10塩基の特異的なDNA配列を認識して結合する。
DNAは4種の塩基からできているので、4塩基の配列はまったくランダムな配列でも、256塩基に1回おこる。6塩基でも4096塩基に1回、マッチする可能性があり、30億のゲノムでは75万か所ありうる。
 トランスクリプトームや発生学からわかってきた遺伝子の発現調節は、転写因子の作用の複雑な組み合わせを知る上で重要である。
そこで、図序−7に示すようなゲノム上のどこに転写因子の蛋白が結合しているかをみるChIP on chipという方法が開発された。
 実際、転写因子の結合をChIP on chipアッセイで検討するとSP1という転写因子は少なくとも全ゲノム上のDNAの2万か所に結合していると考えられている。転写因子の結合とともに予想よりもはるかに多数の種類のRNAが作られている事がわかってきている。個々の遺伝子の発現調節には、予想外に沢山の転写因子がかかわっている。
 さらに転写因子以外の因子も転写にかかわっていることがわかってきた。染色体のDNAは、ヒストンタンパクと結合してクロマチン構造をとり、転写がおこりにくい「閉じた」状態にある場所も多い。転写因子のコファクターがしばしばヒストンのアセチル化酵素活性か、脱アセチル化酵素活性をもちクロマチン構造を変化させる。
 ゲノムの概念がもたらしたのは、個別の遺伝子の機能は、1個の遺伝子だけをみてもわからないということである。たくさんの遺伝子とタンパクとRNAが相互にからみあったゲノムワールドのなかで遺伝子がみえてくる。



2005年6月に羊土社から刊行予定、許可なくして複製・転載を禁止します。