ゲノム解読をきっかけに、今までの医学と大きく異なる方法での研究が始まっている。今までの医学では、分子レベルから研究するか、個体レベルで研究するかで、その間をうめることはほとんど不可能と思われていた。
今日の医学の対象となる、ガンや生活習慣病は、沢山の遺伝的素因と、食事や運動など生活習慣、感染や紫外線や環境中の汚染物質など環境因子の重なりにより発症する。人間の遺伝子はあまりに複雑で、その全貌を解析するのは不可能であると思われていたが、ヒトゲノム遺伝子により1980年代から蛍光標識した核酸を用いてDNAの配列決定のスピードが画期的に早くなった。そして2003年までに人間のDNAの配列がほぼ決定された。こうした多量の情報を系統的に扱う科学が表1に示すomicsとよばれる。
表1.様々な生命情報の包括的解析 
ゲノムgenomeというのは、遺伝子の英語geneに全体の意味の接尾語のomeをつけて遺伝子の全体という意味である。こうした多量の情報を系統的に扱う科学が表1に示すomicsとよばれる。接尾語にomicsをつけると、その科学という意味になる。そこでゲノミクスgenomicsというとゲノム科学をさす。表1に示すように、遺伝子の全体をさすゲノムに対して、蛋白の全体をプロテーム、mRNAの全体をトランスクリプトームという。90年代には、半導体工学を用いて3万個のすべての遺伝子のRNAの量を一度に測定できる図序−4に示すようなDNAマイクロアレイが作られた。
3つの基本的omicsだけでなく、炭水化物や脂質など代謝産物の全体像を扱うmetabolomicsや、蛋白や脂質などの局在情報を扱うlocalizomicsなどあらたな学問領域も次々うまれている。この本(シリーズ)は、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクスを使いこなして、人間の病気とその治療法を理解していくシステム生物医学を紹介する。

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