News

2016.02.15

細胞周期におけるヒストン修飾動態の包括的観測およびヒストン修飾認識タンパク質の同定

「ヒストンコード仮説」を形作るヒストン修飾暗号は、ヒストンタンパク質の翻訳語修飾の組み合わせによって核内で表現されている。単一ヒストン分子上の修飾組み合わせの検出は抗体による手法(ウエスタンブロッティングや免疫染色、ChIP 等)では困難であるが、質量分析法を用いれば可能である。本研究では、高速・高感度・高分解能な最新鋭の高性能 LC/MS/MS システムを駆使して、細胞周期におけるヒストン H4 の修飾動態を包括的に観測し、さらには、光クロスリンカーを導入した高感度かつ高特異的な独自のペプチドプローブによってヒストン修飾結合分子を同定する手法を樹立した。

方法
【質量分析法によるヒストン H4 翻訳語修飾の定量解析】
細胞周期におけるヒストンH4 の修飾変動を測定対象とした。サンプルは、細胞周期を同調した HeLa S3 細胞から回収し、ヒストン抽出したものを消化酵素 AspN で消化することによって用意した。LC/MS/MS 測定系は、リン酸化ペプチドの吸着を防ぐため、金属素材をなるべく排除した部品で構成した。修飾パターンは電子転移解離法 (ETD) を用いた MS/MS スペクトルから同定し、定量は LC/MS のピーク面積から行った。
【ヒストン H4S1 リン酸化結合タンパク質の同定】
通常のペプチドプルダウン法を改良し、ペプチドプローブに光反応基を導入したベイトを用いてプルダウン実験を行った。ペプチド合成については、東京大学 先端科学技術研究センター 岡本研究室 林剛介助教らに御協力頂いた。

結果
ラベルフリー定量 LC/MS/MS により、ヒストン H4 の細胞周期における変動を再現性を以って観測した。既報にある修飾変動に加え、H4S1 リン酸化の変動がより詳細に明らかとなり、M期における増加だけでなく新生ヒストンにおいて M 期に先立って S 期終盤でリン酸化が増加することが分かった。この H4S1 リン酸化に関し、修飾を認識するクロマチン制御因子を同定するため、光クロスリンク法を利用した結合分子探索を行ったH4S1 リン酸化結合分子として 14-3-3 タンパク質が同定され、拮抗実験によって結合の特異性が確認された。


Mass Spectrom (Tokyo). 2015;4(1):A0039. doi: 10.5702/massspectrometry.A0039. Epub 2015 Jul 14.
[PubMed] PMID: 26819910 PMCID: PMC4541035
Middle-Down and Chemical Proteomic Approaches to Reveal Histone H4 Modification Dynamics in Cell Cycle: Label-Free Semi-Quantification of Histone Tail Peptide Modifications Including Phosphorylation and Highly Sensitive Capture of Histone PTM Binding Proteins Using Photo-Reactive Crosslinkers.
Yamamoto K, Chikaoka Y, Hayashi G, Sakamoto R, Yamamoto R, Sugiyama A, Kodama T, Okamoto A, Kawamura T.