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2015.06.22

エピゲノム制御に関わるヒストン修飾解析の高感度化

DNAの配列の変化を伴わない遺伝子発現の制御であるエピゲノム修飾が様々な疾患に関わることが明らかにされ、新たな創薬標的として注目を浴びている。エピゲノム修飾はDNAのメチル化とヒストンタンパク質の翻訳後修飾などがあり、ヒストンタンパク質はテールと呼ばれるN末端側のアミノ酸に多くの修飾を受けそれが様々な遺伝子の発現を制御している。この翻訳後修飾解析には液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)が用いたプロテオミクス解析が用いられる。しかしながら一般的なプロテオミクスの手法である衝突誘起解離法(CID)ではテール部分の長さや、塩基性のアミノ酸を多く含むヒストンテールの性質のため修飾組み合わせを精度良く解析するのは困難であり、ヒストンテールの修飾組み合わせ解析には電子転移解離法(ETD)が用いられる。

システム生物医学分野の川村猛特任助教(現アイソトープ総合センター准教授)はバイオシステクノロジーズ福田哲也博士などとの共同研究により質量分析計で測定する際のヒストンのイオン化を制御する装置を作製した。この装置を用いることで多価イオンになりやすいヒストンテールをCIDに適した2−3の多価イオンにシフトさせ高感度化させた。この電荷数減少効果によりヒストンテールをCIDで精度良く同定することに成功した。これによりCIDのみが可能な一般的な質量分析計でも精度良くヒストン修飾の組み合わせ解析が可能になることが期待されます。

本研究の成果はAnalytical Biochemistry誌に2015年6月に採択されました。


An Improvement on MS-based Epigenetic Analysis of Large Histone-derived Peptides by Using the IVU Interface.
Fukuda T, Hike H, Usui F, Bando Y, Nishimura T, Kodama T, Kawamura T.
Analytical Biochemistry. 2015 Jun 4. pii: S0003-2697(15)00294-8. doi: 10.1016/j.ab.2015.06.002. [Epub ahead of print]


[A] LC-MSでペプチドのイオン化時のプロトン付加数を制御する装置

[B] エレクトロスプレーにメタノール飽和ガスを混合することで4価イオンが減少し、CIDに適したプロトン付加数が2または3のイオンの強度を増加した(図左下)。