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2011.10.19

転写過程でのポリメレースの運動を解析するシミュレーション方法を確立

大田佳宏特任助教と井原茂男特任教授(システム生物医学)は、転写におけるポリメレースの運動を表す新しいシミュレーション方法を開発し転写の実験結果と比較することによって、一つの遺伝子に多数のポリメレースが存在し秩序だって運動する従来とは異なる新しい協調作用を見出し、転写過程を定量的に評価する方法を確立した。

転写はDNAからRNAが作られる上で基本的な過程であり、これまでにも多くの研究がなされてきた。しかし、ヒトを含む真核生物にけるそのメカニズムは不明な点が多く、様々なデータ解析の大きな妨げになっていた。そこで本研究ではポリメレースの運動をセルオートマトンで表現し、ヒストン修飾の有無によってポリメレースが速度を変化させると仮定して転写過程を時間領域における事象として定式化した。

その結果、ヒストン修飾による速度低下がある値より少ないときには、ポリメレースは障害のある領域で速度は落とすものの自由走行と同じ運動を行い、速度低下がある値以上になると速度の最も低い領域で渋滞し始めることが分かった。 計算結果と実験結果を比べたところ、自由走行と同じように振舞う場合でも、一つの遺伝子に多数のポリメレースが存在し秩序だった規則で運動していることを見出した。この複数のポリメレース間の相関は、従来とは全くことなり、長時間かつ広範囲にわたる新しい現象であることが分かった。

今回の研究から、ヒストン修飾によってポリメレースがどのように速度を変化させ、遺伝子全体の発現がいかに変化していくのかというメカニズムの一端が明らかとなった。近年、遺伝子の発現制御、細胞分化、生活習慣病、腫瘍といった生物学の各領域でヒストン修飾をはじめとするエピゲノム修飾が着目されている。本研究成果は、様々な遺伝子においてエピゲノム修飾によって遺伝子の発現がどのように変化するかを定量的に予測できることを示し、転写制御による創薬への可能性を示す知見である。

Ohta Y, Kodama T, Ihara S.
Cellular-automaton model of the cooperative dynamics of RNA polymerase II during transcription in human cells.
Phys. Rev. E, 2011 Oct;84(4-1):041922. Epub 2011 Oct 19.

doi: 10.1103/PhysRevE.84.041922.
PMID: 22181190.