LSBMゲノムサイエンス部門、ヒトゲノムコピー数多型(CNV)地図をNature誌に発表
ゲノムサイエンス部門が、国際的産学連携によって第一世代のヒトゲノムコピー数多型(Copy Number Variation, CNV)地図を作成し、11月23日Nature誌に発表しました。この成果はゲノムサイエンス分野の油谷浩幸教授、石川俊平特任助手、情報物理システム分野の河村大輔研究員(南谷・中村研)が中心になって行われました。関連論文がNature Genetics誌およびGenome Research誌に発表されます。
[ Nature News & Views ] [Nature News]
通常ヒトの細胞には遺伝子は二個(2コピー)あり、一つは父方、もう一つは母方に由来するというのが定説となっています。しかし近年、個人によっては一つの細胞あたりある遺伝子が一個(1コピー)しかなかったり、あるいは3個(3コピー)以上存在するといった遺伝子の数の個人差(コピー数多型=Copy Number Variation: CNV)があることが注目されていました(図1参照)。
疾患のリスク、様々な薬の治療応答性、副作用の違いといった個人の体質差を生み出す原因として、これまではSNP(一塩基多型)に代表される個人間の遺伝子の"配列の違い"が良く知られていますが、近年見つかったコピー数多型(CNV)といわれる現象は遺伝子の"数の違い"であり、遺伝子をまるごと含むような数Kbp〜数Mbpの長さの大きな領域の数が個人間で異なるというものです。
[ コピー数多型(CNV)とは? (ウィキペディア) ]

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図1. コピー数多型(CNV)の概念図
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2005年に世界の5つの研究機関、企業が国際コンソーシアム(ヒトゲノム構造多型コンソーシアム)を結成し、多様な人種におけるコピー多型の全容を解明するプロジェクトを立ち上げました。LSBMゲノムサイエンス部門では、主にAffymetrix社との共同作業により500K SNPアレイのシグナルを処理することによりコピー数多型を特定する主要な役割を果たしました。参加主要5機関は以下の通りです。
ヒトゲノム構造多型コンソーシアム
- 東京大学先端科学技術研究センターLSBM ゲノムサイエンス部門 (CNVプロジェクトサイト)
- アフィメトリクス社[米国](プレスリリース)
- トロント大学 The Centre for Applied Genomics[カナダ](プレスリリース)
- サンガーセンター Wellcome Trust Sanger Institute[英国](プレスリリース)
- ハーバード大学 Brigham&Women's Hospital[米国] (プレスリリース)
今回のプロジェクトでは日本人を含むアジア人、アフリカ人、ヨーロッパ人から成る270人のサンプルを、河村研究員、石川特任助手らが主に開発に携わったアルゴリズムGEMCA (Genotyping Microarray based CNV Analysis)にて解析し、サンガーセンターにおけるTiling BAC-CGHアレイのデータと統合されました。
またハーバード大のグループから270人のすべての細胞の核型解析データと、我々を含む複数のグループから数百箇所に及ぶ定量PCR、質量分析、FISH法による検証データが加えられ、さらに転写領域、保存領域などのゲノムの様々な特徴との関連の他、従来のSNPとCNVとの連鎖不均衡、疾患関連領域における存在の有無などが詳細に解析されました。
06/11/23 その結果、約360Mbp、ヒトゲノム全体の12%以上という、従来考えられていたよりもはるかに広い領域にコピー数多型が見られ、これまで知られていたSNPに加えて新たな個人間のゲノムの多様性を生み出している可能性が示されました(図2参照)。様々な疾患、薬剤感受性に関連するものを含め約3000個の遺伝子が含まれており、いわゆる染色体異常をともなう先天性疾患だけではなく、生活習慣病、自己免疫疾患といったcommon disease(ありふれた病気)を含むヒト形質の個人差に広く寄与している可能性が示されました。
これらのデータはインターネット上の公共データベース(DataBase of Genomic Variants)に公開され世界の研究機関で利用可能となります。

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図2. ヒトゲノムCNV地図
染色体の右の青い横棒はCNVの位置、左の赤い横棒はCNVの相対的頻度を表している。セントロメア周辺に大きなCNVがあり頻度も高いことがわかる。CNV領域は1447箇所見られ、ヒトゲノムの12%を覆っていることがわかった
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[参考文献]
- "Global variation in copy number in the human genome"
Nature 444, 444-454 (23 November 2006)
Journal website
(ヒトゲノムコピー数多型の全容)
[Download PDF]
- "Genome-wide detection of human copy number variations using high-density DNA oligonucleotide arrays"
Komura, D. et al. Genome Res. 16, 1575-1584 (2006)
Journal website
(高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いたヒトゲノムコピー数多型の網羅的検出)
- "Genome assembly comparison identifies structural variants in the human genome"
Nature Genetics 38, 1413-1418 (2006) Jouranl website
(ゲノム配列の比較によるヒトゲノム構造多型の同定)
[関連リンク]
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