
膵b細胞からのインスリン分泌不全は2型糖尿病の大きな特徴の一つであることが知られている.インスリン分泌不全を治療する目的で膵b細胞を標的とした再生医療の実用化が検討されているが,これを進めるためには発生過程における細胞分化を制御する分子メカニズムの理解が必要である.Liver receptor homolog-1(LRH-1)は核内受容体スーパーファミリーに属する転写因子で胆汁酸の代謝に関与するのみならず,肝臓の初期発生マーカーのa-フェトプロテインの発現を調節しており,肝臓の発生や代謝調節に関与していることが知られている。我々は,LRH-1が内胚葉系の臓器の中でも特に膵臓に高発現していることに着目し,膵臓の発生におけるLRH-1の発現調節について解析した。
LRH-1は膵臓の発生に重要な役割を有するホメオドメイン転写因子pancreatic-duodenal homeobox 1(PDX-1)と発生期の膵臓において共発現していること,LRH-1遺伝子のプロモーター領域中にPDX-1の結合配列が存在し,LRH-1の発現がPDX-1によって調節されていることを明らかにした。これらの結果はPDX-1がLRH-1の発現を調節していること,LRH-1がPDX-1の下流に位置し膵臓の発生,分化あるいは膵臓の機能に関与する可能性を示唆している。
Annicotte JS, Fayard E, Swift GH, Selander L, Edlund H, Tanaka T, Kodama T, Schoonjans K, and Auwerx J.
Pancreatic-duodenal homeobox 1 regulates expression of liver receptor homolog 1 during pancreas development.
Mol. Cell. Biol., 23, 6713-6724 (2003).