核内受容体医学

核内受容体は発生や分化といった生理的因子あるいは環境因子などの種々の刺激に応答してリガンド依存的に遺伝子発現を調節する転写制御因子です。ヒトでは48種あり、糖尿病や動脈硬化などの代謝異常症、薬物相互作用、あるいは癌細胞の増殖にも関わっています。我々は、食べ過ぎや運動不足により生じるメタボリックシンドロームの研究から、糖質、脂質およびタンパク質の三大栄養素が中間代謝物を介して相互補填することから、これらの栄養素の代謝を統合した「新しい栄養学」に基づく治療法の確立を目指しています。そのため、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム解析を駆使し、核内受容体による転写および代謝制御機構を明らかにし、がんや生活習慣病の発症機序の解明と治療法の確立を目指しています。また、病態の発症には様々な細胞が関与することから、シングルセル解析も進めています。

ゲノムサイエンス

次世代シーケンサー(NGS)やアレイ解析等の先進的解析技術を用いて取得したゲノム、エピゲノム、トランスクリプトームなどの多重な生命情報を統合し、生命現象、とりわけがんなどの疾患をシステムとして理解することを目指しています。大量情報処理は生命科学が直面する大きな課題であり、情報科学者と実験系研究者が融合した研究環境作りを行っています。
油谷研究室 ホームページ

代謝医学

DNAメチル化やヒストン修飾などのエピゲノムは環境要因により後天的に書き換えられる遺伝情報である。エピゲノムは外的環境に適応するための細胞記憶であり、疾患の発症に深くかかわる。脂肪細胞においてプロテオーム、トランスクリプトーム、エピゲノム、メタボロームの統合解析を行い、栄養環境がエピゲノムとして記憶される「新しい栄養学」の概念のもと、脂肪細胞の環境適応システムを解明し、生活習慣病に対する新たなパラダイムを築き上げる。
酒井研究室 ホームページ

合成生物学

現代生命科学のあらゆる大きな課題が「多細胞生物システムにおける不均質な細胞・分子動態を高解像度で理解すること」を内包する。単一の受精卵はどのような系譜を辿り、ひとつの個体へと発生するのだろうか?任意の器官を形成する細胞は受精卵から何度の細胞分裂を経験するのだろうか?悪性腫瘍はゲノム変異とどのような環境ニッチが相互作用して進展するのだろうか?細胞内の分子ネットワークはどのように形質を作り上げるのだろうか?東京大学先端科学技術研究センター合成生物学分野では分子バーコード技術、ゲノム編集技術、大規模データマイニング等を組み合わせて、このような課題の観察できる遺伝子回路技術を開発している。
谷内江研究室 ホームページ

計算生命科学

タンパク質や核酸 (DNA、RNA) などの生体高分子やその複合体(超分子)の熱力学的性質やダイナミクスを High Performance Computing (HPC) 技術を活用した大規模な分子動力学シミュレーションで調べている。これまで、低分子化合物とその標的タンパク質の結合自由エネルギーを非平衡統計物理の基礎理論に基づいて精度良く求める方法の開発や、第一原理分子軌道計算を用いたタンパク質の分子モデルの高精度化を行ってきた。基礎理論の研究をさらに進めると共に、HPC を活用して Computer Aided Drug Design に向けた研究を進める。

理論超分子科学

理論的アプローチにより、生体分子の複合体・集合体(超分子)の特性や機能を原子・分子レベルで研究する。特に、電子状態計算・分子動力学計算などの手法を基盤にして、構造・ダイナミクス・エナジェティクスの高精度な解析をおこなう。現象を理解・予測することだけでなく、新しい理論解析法・計算アルゴリズムを開発する。さらに、理論的方法をドラッグデザインやマテリアルデザインへと応用へと展開することを目指す。

臨床エピジェネティクス

わが国の高血圧、糖尿病人口はそれぞれ4000万人、890万人に達する。降圧薬、抗糖尿病薬が多く開発されてきたが高血圧・糖尿病による心血管病と慢性腎臓病は増加しつづけている。加齢も要因となっている。わたしたちは高血圧と糖尿病性腎症の進行に関わるエピジェネティックスの不具合を予防・修復できれば臓器障害を減らせるのではないかと考えている。エピジェネティックスはDNAメチル化やヒストン修飾によって遺伝子発現を調節するしくみで、細胞の記憶に関わる。エピジェネティックスの異常を標的として新たな診断・治療法の開発に取り組んでいる。
藤田研究室 ホームページ

ニュートリオミクス・腫瘍学

これまでの栄養学に基づき、がんでは、糖質、タンパク質、脂質はそれぞれ独立したパラダイムで研究されてきました。しかし、最近のがん代謝の研究から疾患栄養学の概念は大きく変わろうとしています。これまで別々に扱われてきた糖質、タンパク質、脂質は、アセチルCoAやケトン体などの中間代謝物を介して相互補填し代謝に影響を及ぼすことがわかってきました。これまで私たちの研究室では、がん細胞が低酸素・低栄養・低pHの過酷ながん微小環境で悪性化を獲得することを明らかにしています。私たちの研究室では、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームの統合解析から、がん微小環境の変化に伴うエピゲノムや代謝の変動が、がんの進展に寄与していることを明らかにしており、これらの研究から新たな治療法の確立を目指しています。具体的には次の3項目について研究を行っています。 (1)新しいオンコメタボライト(がん代謝産物)を同定する。 (2)糖質・脂質・アミノ酸欠乏におけるがん適応機構を明らかにする。 (3)新しい栄養学「ニュートリオミクス」の視点からがんの治療法を開発する。 このように、多階層オミクス解析と新しい栄養学「ニュートリオミクス」の視点から、転移や再発した進行がんに対する新たな治療法を見出すことを目指しています。
大澤研究室 ホームページ

ロボティック生命光学

顕微鏡や生体信号といった光と電気の計測、自在なマイクロ流体技術、ゲノミクス、細胞工学、データ科学、マテリアル合成、生物物理・ソフトマター、と多岐に渡る専門性とチームをがっちゃんこし、従来科学領域やハード・ウェット・ソフト技術領域の壁を超えて生命医科学に新しい切り口を作っています。究極的には、私たちが作る「自律的な機械」に物理学、生物学、医学的に凄い発見をさせるのを目指しています。その過程で、生命の構造を読み取る様々なテクノロジーや生命計測のネットワーク化の実現により、未知なる生命医科学・物理学の新展開や、次世代医療・産業創出に取り組みます。 尖った専門性を身につけ、専門性を超えて価値を見出す思考に興味のある方(学生さん、研究員さん、補佐員さん、楽しい技術の試みに興味のある現・元企業エンジニアの方、などなど)、世界初のアイデアの実現、自力で世界へ実用化、基礎的な生命の物理の計測解析、先端技術開発、ヘルスケア産業応用など、興味のある方、ご連絡ください。
太田研究室 ホームページ

生命データサイエンス

次世代シーケンサおよび質量分析機から出力される計測データをハイスループットに解析する情報科学的手法を開発しています。近年、生物学で計測される電子データは増加の一途をたどっており、大量の生物学データを標準的な方法で処理することがすでに困難な課題となっています。加えて、異なる次元のデータを統合し、従来モデル化が難しいデータに対しても関連性を見出すためには、ビッグデータ解析技術や機械学習の最新の成果(データサイエンス)を取り入れて情報解析を行うことが不可欠になっています。以下の研究を行っています。 1. エピトランスクリプトームの情報解析技術 エピトランスクリプトームと呼ばれるRNAの修飾を含めた解析手法が注目されています。これまでの研究において、塩基レベルでトランスクリプトーム中のイノシン修飾部位を網羅的に検出するバイオインフォマティクス的手法を開発しています。 2. がんゲノミクスの情報解析技術 がん細胞のゲノムに生じた体細胞変異を網羅的に検出することが可能になり、研究のみならず、臨床応用においても積極的な次世代シーケンサの活用が進んでいます。がんの検体では腫瘍細胞の純度(腫瘍率)が低いことも多く、解析を難しいものとしています。これまでの研究で、ノイズの多い環境下であっても、高い精度でがん細胞における体細胞変異、コピー数変異、腫瘍率を算出するアルゴリズムの開発を行い、先端研を含む複数の組織で研究に活用されています。 3.データサイエンスを用いた生命情報データ解析基盤 大量のゲノムデータの中から生物学的な意味や関連性を見出すには大規模にデータを集約させ、分散処理を行う必要があります。将来的な大規模クラウド運用を見据えて、Hadoop/Sparkといったクラウドで標準的な分散技術や深層学習のライブラリを用いた生命情報の解析基盤を開発しています。

プロテオミクス

タンパク質の複合体や翻訳後修飾の解析を質量分析計を用いて行っています。生体内のタンパク質の存在量は10の6〜10乗のダイナミックレンジを持ちます。それらが互いに他のタンパク質・低分子リガンド・DNA・RNAなどと相互作用しながら、リン酸化、メチル化、アセチル化などの様々な翻訳後修飾を受けその性質・局在・発現量を変化させ生体機能を維持しています。それらについての高感度・高精度解析技術の開発を行い、バイオマーカー探索、細胞内シグナル伝達解析・エピゲノム修飾解析などに応用し疾患メカニズムの解明を目指しています。