システム生物医学

これまでの栄養学に基づき、がんや生活習慣病では、糖質、タンパク質、脂質はそれぞれ独立したパラダイムで研究されてきました。しかし、最近のがんや生活習慣病の研究から疾患栄養学の概念は大きく変わろうとしています。これまで別々に扱われてきた糖質、タンパク質、脂質は、アセチルCoAやケトン体などの中間代謝物を介して相互補填し代謝に影響を及ぼすことがわかってきました。我々は、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームの統合解析から、成長、発達、成熟、老化に伴ってエピゲノムと代謝が変化し、がんや生活習慣病の進展に寄与していることを明らかにしており、これらの研究から新たな治療法の確立を目指しています。私たちの研究目的: (1) 新しいオンコメタボライト(がん代謝産物)を同定しがん治療に生かす。 (2) 飢餓やネガティブ・エナジー・バランスの制御系を明らかにし生活習慣病に生かす。 (3) 新しい栄養学の視点から病気の予防と治療に生かす。  このように、エピゲノムと新しい栄養学の視点から、転移や再発した進行癌、動脈硬化、骨粗しょう症や筋力低下、老化に伴う基礎代謝率の低下などに対する新たな治療法を見出すことを目指しています。

計量生物医学

生体反応に関わる複数の生体分子の同定とそれらのダイナミックな相互作用を解析し、生命現象の統合的理解への新しい切り口を見いだします。構造解析やコンピュータシミュレーションを用いたタンパク質相互作用の解析によるドラッグデザイン,ライブセルイメージング,分子パターン認識を基礎とした自然免疫や細胞分裂のメカニズムの解明など,細胞レベルの分子相互作用変化を解析することにより,がんや重症感染症などの新しい創薬コンセプトの開拓を目指します。

ゲノムサイエンス

次世代シーケンサー(NGS)やアレイ解析等の先進的解析技術を用いて取得したゲノム、エピゲノム、トランスクリプトームなどの多重な生命情報を統合し、生命現象、とりわけがんなどの疾患をシステムとして理解することを目指しています。大量情報処理は生命科学が直面する大きな課題であり、情報科学者と実験系研究者が融合した研究環境作りを行っています。
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代謝医学分野

DNAメチル化やヒストン修飾などのエピゲノムは環境要因により後天的に書き換えられる遺伝情報である。エピゲノムは外的環境に適応するための細胞記憶であり、疾患の発症に深くかかわる。脂肪細胞においてプロテオーム、トランスクリプトーム、エピゲノム、メタボロームの統合解析を行い、栄養環境がエピゲノムとして記憶される「新しい栄養学」の概念のもと、脂肪細胞の環境適応システムを解明し、生活習慣病に対する新たなパラダイムを築き上げる。

合成生物学分野

現代生命科学のあらゆる大きな課題が「多細胞生物システムにおける不均質な細胞・分子動態を高解像度で理解すること」を内包する。単一の受精卵はどのような系譜を辿り、ひとつの個体へと発生するのだろうか?任意の器官を形成する細胞は受精卵から何度の細胞分裂を経験するのだろうか?悪性腫瘍はゲノム変異とどのような環境ニッチが相互作用して進展するのだろうか?細胞内の分子ネットワークはどのように形質を作り上げるのだろうか?東京大学先端科学技術研究センター合成生物学分野では分子バーコード技術、ゲノム編集技術、大規模データマイニング等を組み合わせて、このような課題の観察できる遺伝子回路技術を開発している。

計算生命科学分野

タンパク質や核酸 (DNA、RNA) などの生体高分子やその複合体(超分子)の熱力学的性質やダイナミクスを High Performance Computing (HPC) 技術を活用した大規模な分子動力学シミュレーションで調べている。これまで、低分子化合物とその標的タンパク質の結合自由エネルギーを非平衡統計物理の基礎理論に基づいて精度良く求める方法の開発や、第一原理分子軌道計算を用いたタンパク質の分子モデルの高精度化を行ってきた。基礎理論の研究をさらに進めると共に、HPC を活用して Computer Aided Drug Design に向けた研究を進める。

理論超分子科学分野

理論的アプローチにより、生体分子の複合体・集合体(超分子)の特性や機能を原子・分子レベルで研究する。特に、電子状態計算・分子動力学計算などの手法を基盤にして、構造・ダイナミクス・エナジェティクスの高精度な解析をおこなう。現象を理解・予測することだけでなく、新しい理論解析法・計算アルゴリズムを開発する。さらに、理論的方法をドラッグデザインやマテリアルデザインへと応用へと展開することを目指す。

臨床エピジェネティクス講座

わが国の高血圧、糖尿病人口はそれぞれ4000万人、890万人に達する。降圧薬、抗糖尿病薬が多く開発されてきたが高血圧・糖尿病による心血管病と慢性腎臓病は増加しつづけている。加齢も要因となっている。わたしたちは高血圧と糖尿病性腎症の進行に関わるエピジェネティックスの不具合を予防・修復できれば臓器障害を減らせるのではないかと考えている。エピジェネティックスはDNAメチル化やヒストン修飾によって遺伝子発現を調節するしくみで、細胞の記憶に関わる。エピジェネティックスの異常を標的として新たな診断・治療法の開発に取り組んでいる。