チロシン硫酸化は柔らかいペプチドの立体配座アンサンブルを制限し、抗体に対する親和性を高める

タンパク質のチロシン硫酸化は、様々な生理現象を調節する翻訳後修飾の1つである。一般に、チロシン硫酸化はタンパク質の柔らかい領域で起こる。この高い柔軟性を持つペプチドの状態を原子レベルで解析する実験は難しい。ここでは、結晶構造解析・熱力学的測定・分子動力学(MD)シミュレーション・NMRを複合的に活用することで、ヒトCCケモカイン受容体タイプ5(CCR5)のN-末端領域由来のペプチドとこのペプチドを認識する抗体との相互作用が、どのように硫酸化の影響を受けるのかを調べた。複合体構造からは硫酸化の影響がほとんど見られず、親和性の変化を説明することができなかった。しかし、抗体から解離したペプチドの主鎖ダイナミクスが硫酸化により制限されることがMDシミュレーションと独自の構造/揺らぎ解析によって明らかになった。このことはNMRの測定でも確認された。これにより、親和性の変化を矛盾なく説明することに成功した。これは、硫酸化が親和性に及ぼす新しいタイプのメカニズムである。本研究論文は、2018年6月23日付でBiochemistry誌で公開された。

 

"Tyrosine Sulfation Restricts the Conformational Ensemble of a Flexible Peptide, Strengthening the Binding Affinity for an Antibody" K. Miyanabe, T. Yamashita, Y. Abe, H. Akiba, Y. Takamatsu, M. Nakakido, T. Hamakubo, T. Ueda, J. Caaveiro, K. Tsumoto,  Biochemistry, 2018, 57 (28), pp 4177–4185, DOI: 10.1021/acs.biochem.8b00592